2008年11月7日から18日にかけて、かねてより交流のあったインドネシアにおける国際合宿が開催され、武田師範が初めて首都ジャカルタにて合宿指導を行われました。日本より岡春庭五段、武田大雄五段、そして長年インドネシアでの合宿を行われ、今回の合宿の企画者でもある村瀬薫四段が参加、またカナダからはジャンルネ五段が、オーストラリアからはベリン4段が駆けつけ、のべ千人を超える多くの合気道メンバーが集う盛大な合宿となりました。現地の写真と武田大雄五段、村瀬四段からのレポートなどを御紹介致します。
インドネシア合宿を終えて
A.K.I.カナダ大使館 村瀬 薫

平成20年11月15日(土)、インドネシアのジャカルタにて武田師範をお迎えしてのインドネシア合宿が沢山の方の御協力によって無事終えた事をここに感謝し報告いたします。
約2年前に私の友人であるインドネシアのハキムさんからオファーが来ました。全ては東戸塚に稽古に参加されたときの武田師範の稽古指導の情熱による結果でした。合宿の依頼をしましたところ、武田師範が快く引き受けてくださったことを今でも嬉しく感じております。武田師範に心より感謝申し上げます。
ハキム夫妻には演武会場から宿泊施設予約、チケット手配、スポンサー探し、スケジュール配慮まで何からなにまで考慮して頂き本当にありがとうございました。また、インドネシアの方々に接するアドバイスを頂き本当に感謝しております。
ハキムさんのお弟子さんであるヨシさんには、オーストラリア・カナダからの参加者への宿を提供して頂いたり、現地での移動、会場整備など沢山のお手伝いまで、本当に忙しい中ご協力頂きありがとうございました。
その他、合気研究会のスタッフには合宿全体がスムーズに運べるように配慮して頂いたり、思い出に残るビデオを撮影して頂いたりありがとうございました。最後に、今回合宿に参加して頂いたインドネシア各島からの皆様、スポンサーになって頂いた会社の方々、大使の方々に心より感謝申しいたします。今回の成功が皆様方のご協力無しでな考えられなかったでしょう。また合気道の合宿を通じ、宇宙からの波長・エネルギーの大切さ教えて頂いた事も心の宝物となっております。誠にありがとうございました。 合掌

『初めてのインドネシア』   武田 大雄

 11月2週目、武田師範インドネシアセミナーへ参加すべく、岡さんと共にガルーダインドネシア航空にて成田を出発。目的地のジャカルタへ辿りつくのに、バリで乗継でした。気温30℃とちょっと、湿度も80%はあろうかという蒸暑さ。乾季と雨季はあるものの、日本のような四季はなく、一年中暑いようです。乗継便へ乗り込んでもなんだか暑い・・・。経費節減か、暑いのが当たり前なのか、機内のエアコンが掛かっておらず、乗客はみな団扇でパタパタ。なんとなく汗臭いガルーダでした。
古い機体の揺れに不安を抱きつつ、なんとかジャカルタ空港へ無事着陸。インドネシアでは入国時にVISAを取得するので、(30分は待ちそうな)発券所の長い列の最後尾へと並びます。待つこと数分、辺りを巡回している空港スタッフが、『Express!! … Express!?... Do you wanna express??』と『お急ぎの方はこちらへどうぞ』とばかり、親切そうに案内をしています。しかし、『Do you wanna??』を不審に思い何度も詳しく聞いてみると、『チップを出せば先頭に入れてあげよう』ということのようでした。しかもチップは法外なUS50 $を要求!! 結局、40分くらい待った後に漸く入国し、街へ出ずともインドネシアのお国柄を垣間見た初日でした。
翌日には、ハキム先生夫妻と再会、武田師範・村瀬さんとも合流して市内観光へ連れて行っていただきました。ジャカルタの街は公共交通機関の整備が整っておらず、ほとんどがバイクか車での移動です。経済事情のせいかバイクが異常に多く、車の前後左右にまとわり付いてくる感じです。しかも1台に4人乗り5人乗りで走っているので驚きます。日本と同じ左側通行が規則ですが、平然と逆走するバイクや、交差点では先に進入した者勝ちといった感が・・・。運転免許の試験は一応あるそうですが、教習はなく、一発勝負で試験。受からなくても『お金で免許を買う』こともまかり通り、標識の意味や交通ルールを知らない人も居るらしいです。飲酒についても小さい子が飲むケースもあるそうで、『警察に見られていなければルールはなし』がインドネシアスタイルとのことです。街の一角には、屋台通りのようなエリアがあり、民芸品の店が数十軒、バイク部品店が数十軒、果物屋が数十軒・・・と同じ種類の店が並んで建っています。交通の無秩序な行動があるかと思えば、店はキチンと種類毎に集まってならんでいるのは何故か?見ること聞くことの多くが、自分の常識では測り知れず、楽しさ満点の市内観光でした。
さて、本題の合気道ですが、インドネシアにおける合気道の人気は高まりつつあり、ジャカルタ市内にある柔道や剣道の道場よりも、合気道の方が多いそうです。ハキム先生は道場を7つ持ち、200名程が稽古に励んでいます。そのうちの1道場へ私単独で訪れる機会があり、その道場へハキム先生は月に2回指導に顔を出します。それ以外は20歳の若先生が道場長を務め、週2回30名ほどの生徒と熱心に、また楽しく稽古を行っていました。若手に道場を任せるハキム先生の寛容さと、20歳で多くの大人を惹き付ける稽古への熱意は、ハキム先生の情熱と合気道を活用した考え方から来るものと思います。
ハキム先生は、過去には『とにかく相手より強く』という想いで、いわゆる『ストロングスタイル』の合気道を目指していたそうです。ハキム先生昔の稽古内容について、生徒さんに聞くと、『投げや決め技にこだわる稽古で、とにかく痛かった!!』との返答で、インドネシアの人は、他と比較し、他よりも優位に立ちたい傾向が強いとも言っていました。(実際、セミナー中に挑戦的な人も少なくありませんでした)ハキム先生は、比較する意識が強い中、力の限界や、上には上がいることへの壁にぶつかりましたが、ある瞬間からフッと、強さを比較することや相手と争う必要のないことに考えが変わったそうです。相手や困難な問題が向かってきた時には、『入り身転換の発想』で衝突なく良い方法が浮かぶとのことでした。その瞬間から稽古の内容も、相手に勝つ稽古から大きく変化したため、あまりの変わり様に生徒一同最初は驚いたそうですが、次第にファンも増え、現在ではインドネシア合気道会の大きな存在として活躍しています。
ハキム先生は実直なイスラム教徒でもあり、一日数回の礼拝は欠かしません。豚や酒には手を出さないため、生徒は気を使う面もありますが(?)、ラマダンの月も日中食事をせずに、稽古に励むそうです。宗教の垣根を越えて、合気道の思想を広めるハキム先生のような素晴らしい指導者がいるインドネシアは、これから益々の発展が期待されると同時に、合気の道の素晴らしさを再認識させてくれたインドネシアセミナーに感謝します。文中には書き切れませんが、ハキム先生の全てを支える奥様(シャンティさん)、細かい気配りを下さった道場の方々、稽古で触れ合った皆様、心からお礼を申し上げる次第です。